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管理者(病院長)あいさつ

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さぬき市病院事業管理者 兼さぬき市民病院長 德田 道昭

さぬき市民病院の沿革と展望

1)開院から新病院完成まで 

当院は、1951年に内科、外科、放射線科を備えた「大川病院」として誕生し、現在に至るまで約60年に近い年月を経ております。その間、5町合併によって「さぬき市」が誕生した2002年4月に、現在の「さぬき市民病院」に改名しました。

合併前後から、老朽化した当院の改築を要望する声が院内外から持ち上がっていましたが、困窮した地方財政下では行政の決断は容易ではなく、結局、着想から約10年を経た2010年4月に改築工事が始まりました。そして、着工から約1年9ヶ月を経た2012年1月15日には開院式を無事挙行し、同30日からは新棟(一般病床数175床、感染症病床4床、計179床)での診療を開始しました。

新病院の設計に際しては、高齢化率が高い地域特性を考慮して、‘高齢者に優しい病院’が基本的なコンセプトになり、外来各診療科は無論のこと、リハビリや透析室などの共用部分についてもゆったりとした受診環境が創出されました。また、患者さんの護送・搬送のために、病棟の廊下幅は車椅子が悠々とすれ違える2.7mに設定しました。病棟では、各種の処置や介護をしやすいようにベッド周囲を広めにし、患者さんのプライバシーを保つために、個室数を大幅に増やすと同時に、大部屋にも可動式の間仕切り棚を設置しました。加えて、各病棟のコーナーとウィングに設置されたラウンジでは、明るい陽射しの中でお見舞いの方と歓談できるような設計になっています。

一方、ADL(日常活動度)が低下した高齢患者さんの早期社会復帰を支援するために、「亜急性期病床」(現在は「地域包括ケア病棟」)を設置してリハビリテーションを濃厚に実施すると同時に、新たに併設した食堂では、看護師や介護職員が介助しながら自立を促せるように工夫しました。また、退院後の在宅療養も支援すべく、旧病院では分散していた訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションの各部署を、一つの部屋に集めて「在宅療養支援室」とし、患者さんの情報を今まで以上に共有できるように設計しました。高齢化に並行して増加する救急医療への対応としては、2台の救急搬送を同時に受け入れられるように救急処置室を拡充するとともに、収容施設としては、高度治療室(HCU)8床を併設し、外来ばかりでなく、病棟での急変患者にも対応できるように工夫しました。

さらに、高度診断・治療機器として、従来の64列CT、MRI装置に加えて血管造影装置を新たに導入し、血管合併症の初期処置を院内で施行できるように企画しました。また、消化管内視鏡室も2室に拡充され、高齢者に多い消化器系急病患者への緊急対応を可能にしました。また、手術に関しては、手狭だった3つの手術室を拡張して、緊急手術を含めた複数の手術が並行して行えるように企画すると同時に、高齢者に多い関節疾患を考慮して、無菌手術室を1室加えて人工関節手術を可能にしました。

一方、周産期・小児医療も担う二次機能病院として、産科では分娩室を2室に拡充し、小児科病棟では、両親の付き添いが可能なように個室数を増やしました。このように新装なった当院には、多数の外来患者さんが来院されており、また、一次医療機関からの紹介を含め、地域の二次機能病院として寄せられる期待の大きさも痛感しています。

2)当院の現状と今後の展望 

当院の診療内容は、内科、外科、整形外科、精神科、外科、脳外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻科、産婦人科、皮膚科(非常勤)、形成外科(非常勤)と多彩であり、さらに2006年からはリウマチ科も加わりました。

2020年3月現在、外来患者数は1日470人程度ですが、周辺人口の減少に伴って年間2〜3%ずつ減少しています。救急搬送は、改築直後は一日平均4〜5件、年間約1,500件でしたが、昨今、内科医の減少に伴って連日の当直体制を維持することが困難となり、隣接する東かがわ市にある公立病院との二次救急輪番制を徹底した影響か、年間1,000件弱に減っています。

入院に関するデータでは、手術件数は年間1,300件(全身麻酔比率35%)程度で、当市の人口(約5万人)から見ると頑張っているように思いますが、徐々に減少しています。その背景には、人口減に加えて、車で15分ほど西の距離にある香川大学医学部附属病院の改築が終わった直後という負の影響もあるのかも知れません。

これらの診療規模の縮小傾向に追い打ちを掛けるように、2019年の秋には、地域の公立病院・公的病院の中で「再編と統合」が必要な病院として全国で424病院の名前が挙げられました。当院は①香川大学医学部附属病院と至近距離(車で20分以内)にあることに加えて、②4大疾病と政策的事業における診療規模がさほど大きくないことで、上記のような判断に至ったものと思われます。しかしながら、当地において当院が果たすべき役割を考えると、厚生労働省の考え方には俄に賛同しがたい部分もあります。即ち、当院は「一次医療機関」と「三次医療機関」の中間に立って‘双方向性’の医療を仲介する「二次機能病院」であり、具体的なアクションとしては、医療に対する需要を判断して、当院で対応不可能な場合には、それぞれの施設に対して「紹介」と「逆紹介」を頻回に行うことを求められます。          

わかりやすく言えば、集学的治療が必要な悪性腫瘍の大半や、高度緊急処置が必要な心筋梗塞などの疾患は、「三次機能病院」である香川大学附属病院に紹介し、治療が終了した患者は当院に逆紹介されて化学療法やリハビリを受ける、あるいは開業医や福祉施設に紹介して慢性期療養に回るといった流れに乗ります。もちろん、一般急性期疾患(感染症、外傷、骨折、など)は、当院が初期対応することによって、高次機能病院が一般急性期患者で混雑するのを防ぐ‘調整機能’もあります。

厚労省の考え方では、この‘機能分化’が軽視されており、「再編・統合した大病院(三次医療機関)」と「診療所(一次医療機関)」の連携によって目的が達成されるかのように見えます。しかしながら、フレイル状態にある高齢者においては、患者毎に要求される医療を「急性期」から「回復期」、「慢性期」までシームレスに提供するには、地元に密着した「二次医療機関」の存在が不可欠です。また、「一次医療機関」も減少しつつある高齢過疎地区では、「二次医療機関」自身が在宅療養も展開し、容態の急変にも備えなくてはなりません。厚労省が目指す「再編統合された大病院」が、これらの需要に対してまでも細やかに対応できるかと言えば甚だ疑問です。

さて、地域の事情を反映した「二次医療機能」を実現するには、医師だけではなく、看護師や他のコメディカルスタッフとの連携、いわゆる「チーム医療」が不可欠です。当院では、高齢患者が入院すると、ごく初期のうちに「身体機能」「嚥下機能」「褥瘡」「転倒転落危険度」「認知症」など様々な評価(総合評価)がなされ、それぞれリハビリテーションや嚥下チーム、褥瘡チーム、認知症チームなど、必要なスタッフが参集して看護方針が決定されます。

また、高齢者にありがちな退院後の生活不安については、「総合支援センター」内にある「入退院調整室」内のMSWと看護師によって、必要な医療・介護の程度によって必要なサービスの在り方について検討を加えます。具体的には、高齢過疎化が進む地域では、退院後も独居で生活せざるを得ない患者も頻回に経験されるため、かかりつけ医が存在する場合には、「地域医療連携室」を通じて訪問診療や看護を要請することもあります。かかりつけ医が不在であれば、当院からの「在宅療養支援室」による訪問診療・看護・リハが求められる場合もあり、月間40件程度の訪問診療をこなしています。特に、今後必要になってくると思われる「在宅看取り」や「施設看取り」に関して、ACP(Advanced Care Planning)に基づいた連携の需要が増えてくると思われ、院内と同時に院外にも「多職種連携」の重要性がクローズアップされてきています。このように考えてくると、高齢者の医療・ケアには「個別化されたプログラム」が必要であり、前節でも触れたように、‘大病院化’と‘個別化’は相容れないのではないか、という懸念を抱かざるを得ません。

他の政策的医療事業に話題を移すと、‘産科医療’については、当院は東讃地区における唯一の分娩施設であり、高齢過疎地域にあっても年間250人程度の新生児が産声を上げていました。この背景には、当地出身の妊婦の‘里帰り分娩’が多いことが挙げられ、地域における産科医療の特質を反映しているように思われ、分娩後の授乳指導など、きめ細かな周産期医療サービスの提供を目指して、専門スタッフを育成していました。しかしながら、2019年9月の段階で、常勤医師の退職によって分娩機能が停止しており、現在、再開に向けて香川大学附属病院との協議を続けています。‘分娩機能’は病院にとって‘命の息吹’であり、過疎化によって暗くなりがちな地域において‘希望の灯り’のような存在と考えており、何とか再開したいものです。

一方、 当院の‘小児診療’について特筆すべき点は、2003年4月から地域の医師会と協力して「小児夜間急病診察室」を365日間運営している点です。午後7時30分から10時00分までの3時間に、平日は5〜10件、インフルエンザシーズンには最大20件程度の受診があります。市民病院が地域の医師会と協力した形での当室の運営については全国のモデルケースにもなっていますが、肝心要の小児科医の不足と協力医師の高齢化によって、制度を支える医師が減少してきている点が悩みの種です。

このように書いてくると、この地域において当院が果たすべき役割の多様さと複雑さには私自身も驚かされますが、現在の最も大きな課題としては、やはり‘医師不足’の問題です。当院がこれだけ多機能であるにもかかわらず、‘地域連携におけるkey person’としての働きをしてくれる内科医が10人程度しかいません。これだけの数で1日250人近い患者に対して、専門診療と総合診療を提供しつつ、各種検査・処置をこなし、当直業務までもこなそうとすると、どうしても残業時間が増えてしまい、「働き方改革」の流れの中でいかに医師の勤務時間を短縮させるか、病院長としての悩みが深いのが現状です。

幸い、近隣の病院との救急輪番制度や、専攻医の派遣などで何とか急場を凌いでいますが、今後、郡部における地域医療の中核となって活躍してくれる医師、特に内科医を何とか増やさなくてはなりません。その辺りの詳しい実情と今後の展望については、別ページの「求む、地域医療を目指す医師、とくに内科医!!」をご覧下さい。

以上、長い文章を最後まで読んで頂いた読者に感謝申し上げると同時に、地域医療を取り巻く環境が益々厳しくなりつつあるなかで、当院をご利用になる皆様には、当院の実情をご理解頂き、今後とも暖かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

                                          2020年3月 

 

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