第1 国の動向
わが国の経済は、東日本大震災に加え、世界的な金融危機という二つの危機に直面しており、これによりもたらされた資源・エネルギーをはじめとするさまざまな課題を克服し、持続的な経済成長の実現を図る必要がある。
また他方では、毎年度30兆円から40兆円台に上る巨額の財政赤字の計上により、公的債務残高が増加を続けていることから、歳出削減や税外収入による増収、さらには国債発行のあり方など財政健全化に向けた取組についても検討が必要となっている。
こうした状況の中、国の平成24年度予算編成においては、最優先の課題である東日本大震災からの復旧・復興と経済社会の再生に全力を尽くすこととされ、特に経済社会の再生に真に資する分野に予算を重点配分する取組として、7,000億円規模の「日本再生重点化措置」の実施が決定された。さらには、ムダづかいの根絶や不要不急な事務事業の徹底した見直しにより歳出全般にわたる改革に全力を挙げるほか、省庁を超えた大胆な予算の組替えを基本として、より優先順位の高い政策に重点配分する戦略的な予算編成を行うものとしている。
具体的な施策としては、合併特例債の延長、補助金の一括交付金化、35人学級の拡充など、市政に大きな影響を与える施策が検討されているものの、未だ今後の見通しが不透明であることから、地方交付税を含めた地方財政対策等について、その動向を注視し、速やかに対応していく必要がある。
第2 地方財政の現状と課題
地方財政は、過去の景気対策による公共事業の追加や減税の実施などにより、 借入金残高が累積し、平成17年度に201兆円というピークを迎えた。その後、行財政改革の推進等により減少に転じたものの、 平成20年度からは、税収の急激な落込みと交付税の原資不足による臨時財政対策債の増加により、再び上昇に転じている。
さらには、今後、東日本大震災からの復旧・復興を進めるため、多額の災害復旧債や歳入欠かん債の借入が見込まれ、地方債残高の急増が懸念されるところである。
このような状況の中、国は、地方交付税の加算等により確実に地方の復興財源の手当を行うとともに、「中期財政フレーム」の対象期間である平成24年度から26年度においては、安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源の総額について、 平成23年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとしている。
しかしながら、現時点では平成24年度の地方財政計画が示されていないことから、地方財政を取り巻く環境は不透明であり、特に大震災による被災地域では、税収の大幅な落ち込みが見込まれる中で、復旧・復興事業に係る財政負担が増大するなど、財政運営は一段と厳しさを増すことが予想される。
第3 本市財政の現状と見通し
本市の財政は、平成20年3月に策定した財政健全化策に沿った種々の取組などによって、市債残高がピーク時よりも63億円(19.5%、22年度末)減り、財政健全化法に規定する健全化判断比率である実質公債費比率が、20.8%(前年度比1.8%減)、経常収支比率も88.4%(前年度比2.3%減)となるなど、健全化に向けた一定の成果が表れつつあるものの、依然として高い水準にあることに変わりはなく、財政構造の硬直化は未だ改善されていない。
今後の財政の見通しとしては、歳入面では、合併算定替の終了に伴う地方交付税の逓減、景気低迷に伴う市税収入の減少が予想され、歳出面では、新病院建設や学校再編整備等に伴う公債費や流域下水道に係る負担の増大に加えて、少子高齢化の進行に伴う社会保障関係経費の増加や老朽化が進む施設の維持補修費の増嵩なども想定されることから、より厳しい状況も覚悟しなければならない。
現在策定中の次期財政健全化策(平成24年度~平成26年度)における将来推計では、実質公債費比率は、今後も逓減傾向にあり、平成25年度には起債許可団体の基準である18%を下回る見込みであるものの、平成24年度が合併特例債の発行期限となっていることから、光通信網の整備や流域下水道施設の引受けに要する多額の費用負担など、投資的経費の集中に伴う市債の新規発行額の一時的な増嵩が避けられない状況となっており、経常経費の縮減に向けた取組を加速させることが喫緊の課題となっている。
そうした状況下にあっても、市民が安全で安心して暮らせるまちづくりに向けて、将来にわたって行政サービスを安定的に継続していくことが重要であり、メリハリをつけた施策の選択と集中、必要なサービスのより効率的な実施及び歳入確保への不断の努力を基本として、健全な財政運営を推進していかなければならない。
第4 予算編成方針
<1>基本方針
市民一人ひとりが、このさぬき市に住んで良かったと実感できる「安全・安心・ 快適に暮らせるまちづくり」、「人の心豊かなまちづくり」、「活力があり、人が交流するまちづくり」、そして「市民が主体的に活動するまちづくり」を推し進めることを目標として、平成24年度予算を編成する。
特に重点的に取り組む項目として、次の七つを掲げる。
(1)地域防災計画に基づく、洪水、地震対策の強化など、災害に強いまちづくりの推進
(2)学校再編を含めた教育施設の整備をはじめとする教育と文化の振興
(3)コミュニティの活性化と市民が主体的に取り組むまちづくり施策の拡充
(4)新市民病院との連携による保健、医療、福祉の充実
(5)土地開発公社の債務削減や自主財源確保対策の強化など、財政健全化策の推進
(6)活力ある産業基盤づくりと雇用の確保、観光振興を進める取組
(7)優れた歴史遺産や自然環境を活用した、人が交流するまちづくりの推進
編成に当たっては、平成24年度が「さぬき市総合計画 後期基本計画」の初年度となることから、前期基本計画の成果を検証するとともに、後期基本計画に搭載している事業を中心として、現在の市民ニーズを反映した行政課題への対応を図るとともに、すべての事務・事業を精査し予算を立案すること。
その際、「選択と集中」によって、施策・事業の重点化による優先的課題解決といった点にも十分留意すること。同時に、今後とも厳しい財政状況が続くことを念頭におき、無駄を排除し、徹底した簡素・効率化を図って経費と財源の節減に努めることとする。
予算規模については、国の予算編成の動向等を見極めながら今後の編成過程の中で決定していくが、大幅な財源縮小が想定される将来の姿により近づけるため、現時点における経常的調達可能財源の範囲内において、さらに充当一般財源総額の確実な抑制に努める。市債については、残高を削減する方針に留意しつつも、合併特例債発行可能期間と残事業を勘案し、効果的・効率的活用を図るものとする。
以下、予算編成に係る方針として、留意すべき事項を定める。
(1)新たな視点
市民感覚、公平性等これまでややもすれば疎かになりがちだった視点をより意識し、またアカウンタビリティが果たせることに留意しながら事業のあり方と予算を検討する。
(2)コスト意識をもった予算編成
先例にとらわれることなく、以下の事柄に留意して予算を編成する。
・必要性:行政が担う必然性があるか
・効率性:無駄が無く、投入される行政資源に見合う成果が見込めるのか
・有効性:意図する目的・効果を最大化できる手法が選択されているか
・緊急性:上記観点に加え、さらに他事業に先んじて実施するべきものか
・財政健全化策の継続・推進
平成20年3月策定の財政健全化策が最終年度を迎えていることから、改めてその進捗状況を確認し、次期計画に向けて具体的取組事項の継続及び推進を図ること。
(3)財政健全化策の継続・推進
平成20年度策定の財政健全化策に沿った各種の取組をさらに継続、発展させるとともに、現在策定中の次期計画とあわせて、より効果的・効率的な取組の推進を図ること。
(4)年度負担の考慮 施設の建設、新たなシステム構築などいずれにおいても、以後の管理費や保守委託料など後年度負担
が生じることから、それらを十分考慮した上で事業に取り組むこと。
(5)枠配分予算の有効活用
限られた財源の有効活用という枠配分予算のメリットを活かし、部局長の裁量を活かした調整機能を発揮し、変化する行政需要に対して柔軟かつ的確に対応すべく事業の再構築を図ること。
(6)年間総合予算の徹底
年間総合予算として編成し、年度内に必要な経費は、すべて当初予算に盛り込むこと。特に、必要不可欠な経費はまずもって確保するものとし、最初から補正ありきの要求は認めないこと。
(7)特別会計等
特別会計についても、基本的に一般会計と同じ方針で作成し、独立採算の原則に基づき、安易に一般会計に依存することなく、業務運営の健全化を図ること。公営企業会計についても、基本原則である経済性を発揮し、収益力の向上と事業の効率化による財務体質の強化を目指し、一般会計の負担軽減を図ること。さらに、市が出資する公社、いわゆる第3セクターについても、適切な指導・管理によって健全経営を促進し、市の財政負担が生じないよう努めること。
(8)国県の予算への対応 現行制度での予算編成を基本とするが、国・県の政策変更や予算編成等の動向を的確に把握したうえで、適切な対応を図ること。
<2>個別方針
1.歳入
自立的な財政運営が求められる中、自主財源の確保が非常に重要となっている。特に、類似団体に比べて財政力が劣る本市にあっては、市税の適正な賦課と徴収の強化はもとより、分担金・負担金及び使用料・手数料の適正化のほか、適切な債権管理に基づく未収金の縮小など可能な限り財源確保に向けた努力を行っていく必要がある。特に未収金対策は、市民間の公平性の確保につながる重要な事項であり、決して疎かにしてはならない。
歳入の見積りにあたっては、社会経済情勢の変動や国・県の施策の動向を見定め、法令、条例等に十分留意し、必要な財源の確保に向けて積極的に取り組むことを念頭において見積りを行うこと。
(1)市税
過去の推移、経済情勢を適正に判断しつつ、税制改正等の動向を見極め、課税客体、課税標準の的確な捕捉に基づき調定見込額を見積もるとともに、収納率向上が使命であることを十分認識のうえ計上すること。
(2)国・県支出金
制度変更の動向把握に努め、適正な計上を図り、廃止や補助率引下げ等によって年度途中における歳入不足に陥ることがないよう注意すること。
補助事業といえども、事業の実施には一般財源を要することを勘案のうえ、緊急度、事業効果等を十分考慮して、その活用に努めること。
(3)分担金・負担金及び使用料・手数料
受益者負担の原則と住民負担の公平性に配慮し、他市の状況なども把握しながら、積極的に見直しを行うとともに、収入未済額の縮小に向けた取組みを強化して収入確保を図ること。
(4)財産収入
資産を適正に管理し、積極的かつ効果的に運用して増収を図ること。特に、所管する資産のうち、行政目的の活用がなされていないものは、遊休資産として処分の方針が定まるものから順次計画的に処分して財源確保に努めるとこと。
(5)市債
将来の公債費負担適正化に向けて、安易に市債に頼る事業計画は厳に慎むなど、それぞれが借入額抑制に取り組むこと。
新規事業については、その適債性・充当率について予算調整室と協議するとともに、既存事業についても充当率を確認して見積もることとするが、前年度に市債充当のなかった継続事業への充当は、要求段階で行わないこと。
合併特例債の活用は、「新市建設計画」に計上されている事業で、市の一体性の速やかな確立、市の均衡ある発展、公共的施設の統合整備等に資する事業が対象であること。
(6)その他の収入
新たな財源の確保に積極的に努めると同時に、零細な収入についてもなおざりにすることなく、細大漏らさず見積もること。
2.歳出
歳出については、最小の経費をもって最大の行政効果が得られるよう工夫を凝らし、決して先例や慣例にとらわれることなく、ゼロベースからの積上げによって予算を見積もること。
以下、性質別の留意事項を定める。
(1)義務的経費・準義務的経費
それぞれ必要額を見積もることとするが、人件費の基礎となる職員数は、さぬき市第2次定員適正化計画に基づくものとし、非常勤嘱託職員についても必要最低限度の人員を前提に算定すること。
扶助費については、過大計上を厳に慎むこと。
一部事務組合負担金及び債務負担行為に基づく元利償還助成金は、必要額を計上することとするが、所管の一部事務組合に対して、本市の厳しい財政状況と予算編成方針の周知徹底を図り、新たな大規模投資の抑制と経常経費の縮減を強く求めるなど、主体的に今後の負担金抑制に努めること。
(2)政策的経費
重点事業として特別枠で要求できる経費であるが、実施方法及び経費のあり方について、再度有効性・効率性の観点から精査したうえで要求を行うこと。
(3)特別需要経費
特別枠として要求することができる経費であるが、再度内容を精査し、必要最低限の額で要求を行うこと。
なお、以上2項目ともに、要求額=予算計上額ではない点に留意すること。
(4)投資的経費
投資的経費は、予算の性質分析上、臨時的経費に位置づけられる経費であり、緊急性、必要性及び有効性を特に考慮し、重点化を図りながら計画的実施に努めること。継続事業についても積極的に見直し、不要、不急な事業は、躊躇無く廃止、凍結を行うこと。
事業費の算定に際しては、規模や単価等を適正に積算し、過去の実績も勘案して過大見積りを避け、積算内容が合理的に説明できる要求額とすること。
要求上限額は、特別経費を除いて、一般財源ベースで23年度当初予算額〔配分対象外経費を除く〕の97%の範囲内とする。
なお、この経費に枠配分はなく、すべてが査定対象であるので、各施策における事業の優先順位を明確にしておくとともに、要求書の提出に当たっては、位置図、施設概要資料及び改修であれば老朽状況を示す資料等を添付すること。
(5)一般行政経費
必要な事業を効果的、効率的に実施するための予算内容とし、既に目的を 達した事業や非効率あるいは効果の低い事業は、廃止・縮小を含めて見直すこと。
各経費は後記「節別基準表」に基づき積算するものとする。
枠配分額は、23年度当初予算における一般行政経費充当一般財源から配分対象外経費(臨時的事業、終了事業及び継続の政策的経費等に係るもの)を控除した額の98%とする。
特定財源のみで賄われる事業についても、同様の基準とし、オーバーフローが生じる場合は、必ず義務的経費に充当すること。
使用料・手数料等のうち、前年度に義務的経費に充当していた財源を予算要求段階で一般行政経費に充当替えすることは認めない。
(6)特別会計
経営的観点に立った事務事業の効率化と収入確保に努め、業務運営の健全化を図って、一般会計からの繰入れを極力抑制すること。
繰出金については、公債費、保険給付費等に対する定率負担部分は必要最低額を、これ以外については、投資的経費、一般行政経費相当分とも上記一般会計の要求基準に準じて算定し、算定内容を別途通知する確認表に記すこと。
3.特記事項
(1)新規事業は、既存事業の見直しによる財源捻出を原則とする。立案にあたっては、現状における課題、目的、効果、実施方法及び他の施策との関係等を十分検討のうえ整理し、明確にしておくこと。
(2)国・県の補助事業において、補助が打切られるものについては、その必要性を再考したうえ、原則として廃止・縮小、若しくは同等の財源で実施可能な効果的代替事業への移行を図ること。
(3)年度を超える契約を新たにする場合は、「債務負担行為見積書」及び「債務負担行為支出予定額等説明書」の作成及び提出が必要である。後年度負担を生じるため、必ず事前に予算調整室と協議し、安易な設定は行わないこと。
(4)枠配分予算及び投資的経費要求額は、「予算要求事業別集計表」を作成し、要求可能範囲内であることを確認のうえ提出すること。